書籍・外山滋比古著「知的創造のヒント」

外山滋比古さんの『知的創造のヒント』は、思考や発想のあり方について、柔らかく、しかし深い洞察に満ちた一冊でした。

著者は「知的な創造とは何か?」を探るにあたり、天才的なひらめきや特別な才能ではなく、誰でも日常の中で工夫できる「思考の技術」に注目します。

その視点がとても新鮮で、知的活動をより身近に感じさせてくれました。

とくに印象に残ったのは、「忘れることの大切さ」という逆説的な指摘です。私たちは一般的に、記憶力の良さこそ知性の証だと考えがちですが、外山さんは「意識的に忘れる」「いったん寝かせる」ことの重要性を説きます。

頭の中に情報を詰め込みすぎると、自由な発想ができなくなる。だからこそ、思考を一度棚上げし、時間をおいて再び取り出すことで、新しいアイデアが生まれるというのです。

これは、私自身の経験にも深く通じるものがあり、思い悩んでいたときにふと良いアイデアが浮かぶという出来事の背景には、こうした「忘却の知」が働いていたのかもしれないと気づかされました。

また、外山さんは「朝の頭」と「夜の頭」の違いについても語っています。朝は新しいことを考えるのに向いており、夜は既知の知識を整理するのに適している、という指摘はとても実用的で、思考のリズムに対する感受性が高まったように感じます。

普段、自分の作業時間を深く意識することはあまりありませんでしたが、この本を読んでからは、頭の働き方に応じた行動ができるよう心がけるようになりました。

そして何よりも、本書の魅力はその語り口のやわらかさにあります。

難しい理論や哲学ではなく、身の回りの小さな事例やエピソードを交えながら、知的生活のあり方について考えさせてくれるため、読んでいて自然と頷いたり、微笑んだりすることが何度もありました。

知的でありながらどこかユーモラスな語りは、外山さん自身の「創造的な知性」の現れのように感じました。

『知的創造のヒント』は、勉強や仕事に取り組むすべての人にとって、思考の肩の力を抜いてくれる一冊です。

「考えること」そのものがもっと自由で、もっと楽しいものであってよい。そう思わせてくれるこの本に、私は感謝したいと思います。

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