ろくろ成形初挑戦で作品が崩壊した失敗体験談
私がろくろ成形に初めて挑戦したのは、陶芸教室に通い始めて3週間目のことでした。それまでは手びねりで小さな器を作っていましたが、ついにろくろの前に座る日がやってきたのです。営業一筋で40年間働いてきた私にとって、手先の繊細な作業は未知の領域でした。
初回のろくろ体験で起きた予想外の惨事
先生から土練りの方法を教わり、500gの粘土を受け取りました。「まずは土殺しから始めましょう」と言われ、回転するろくろ台の上で粘土を中央に据えます。土殺しとは、粘土内の空気を抜いて中心を出す重要な工程のことです。
ところが、この土殺しが思った以上に難しい。粘土に手を添えてろくろを回すと、みるみるうちに形が歪んでいきます。力の入れ方が分からず、強く押しすぎると粘土が潰れ、弱すぎると中心が定まりません。10分ほど格闘した結果、何とか中心らしきものができました。
次は穴あけの工程です。親指を粘土の中央に差し込み、底から2センチほど残して穴を開けていきます。しかし、ここでも問題が発生。穴の位置が中心からずれてしまい、壁の厚さが不均一になってしまいました。
作品崩壊の瞬間とその原因分析
そして運命の瞬間がやってきました。壁を立ち上げる「引き上げ」の工程で、私の初作品は無残にも崩れ落ちたのです。
崩壊の原因を後で分析すると、以下の問題点が浮かび上がりました:
問題点 | 具体的な失敗内容 | 正しい方法 |
---|---|---|
手の位置 | 内側と外側の手の連携ができていない | 内側の手で支え、外側の手で形を整える |
水の使用量 | 水を付けすぎて粘土が柔らかくなりすぎた | 必要最小限の水で滑りを良くする程度 |
引き上げ速度 | 急いで一気に高くしようとした | 3-4回に分けてゆっくりと引き上げる |
失敗から学んだろくろ成形の重要ポイント
この失敗体験は、後に陶芸技能士の資格取得を目指す際の貴重な教訓となりました。技能検定では、限られた時間内に正確な寸法の作品を完成させる必要があります。初心者時代の失敗を振り返ることで、ろくろ成形における基本の重要性を痛感しています。
特に社会人の方がろくろ成形を学ぶ際は、焦らずに基礎を固めることが最も重要です。仕事で培った集中力は陶芸にも活かせますが、体の使い方は全く異なります。私の場合、営業で鍛えた「根気強さ」だけは陶芸にも通用しましたが、手先の感覚は一から習得する必要がありました。
現在では、あの日の失敗があったからこそ、基本に忠実な成形ができるようになったと感謝しています。失敗は恥ずかしいものではなく、上達への確実な一歩なのです。
陶芸技能士を目指すきっかけとなった営業マン時代の転機
営業マンとして30年以上走り続けた私にとって、57歳の春は人生の大きな転換点でした。当時、取引先との商談で疲れ果てた心を癒すため、偶然立ち寄った地元の陶芸展が、後に陶芸技能士を目指すきっかけとなったのです。
営業ストレスから解放された瞬間の衝撃
展示会場で目にした職人のろくろ回しは、まさに芸術そのものでした。静寂の中で回転する土の塊が、職人の手によって美しい器へと変化していく様子を見て、「これまで追い求めてきた数字やノルマとは全く違う世界がここにある」と直感したのです。
営業の現場では常に結果を求められ、月末の数字に追われる日々でした。しかし、ろくろの前に座る職人の表情は穏やかで、時間を忘れて創作に没頭している姿が印象的でした。その瞬間、「定年後はこんな世界で生きてみたい」と強く思ったのです。
技術習得への具体的な道筋を描く
展示会から帰宅後、すぐに陶芸について調べ始めました。そこで知ったのが陶芸技能士という国家資格の存在です。趣味として始めるのも良いですが、営業マン気質の私は「どうせやるなら体系的に学び、技術を証明できる資格を取得したい」と考えました。
調査の結果、以下のような学習プランを立てました:
段階 | 期間 | 学習内容 | 目標 |
---|---|---|---|
基礎習得期 | 1-2年目 | ろくろ成形の基本技術 | 基本的な器の制作 |
技術向上期 | 3-4年目 | 釉薬・焼成技術の習得 | 陶芸技能士3級取得 |
専門技術期 | 5年目以降 | 高度な成形・装飾技法 | 陶芸技能士2級取得 |
営業経験が陶芸学習にもたらした意外なメリット
営業時代に培った計画性と継続力は、陶芸技術の習得においても大きな武器となりました。特に、顧客との関係構築で身につけた「相手の立場に立って考える力」は、陶芸教室での指導者との関係や、作品を使う人の気持ちを考える際に活かされています。
また、営業で鍛えられた失敗からの立ち直り力も重要でした。ろくろ成形では最初の数ヶ月間、作品が完成することはほとんどありませんでした。しかし、「契約が取れない月があっても、次月に向けて改善点を見つける」という営業マインドが、陶芸技術の向上にも直結したのです。
現在、自宅工房でろくろを回しながら、あの日の展示会での感動を思い出すことがあります。営業マン時代の経験値は、陶芸技能士としての新たな人生を歩む上で、予想以上に大きな財産となっています。
ろくろ成形の基本姿勢で犯した致命的なミス
私がろくろ成形を始めたばかりの頃、最も大きな失敗をしたのは基本姿勢でした。営業マン時代の癖で「効率重視」の考えが抜けず、教室で教わった正しい姿勢を軽視してしまったのです。この致命的なミスが、その後3ヶ月間も上達を阻む原因となりました。
椅子の高さ設定で犯した根本的な間違い
最初の失敗は、ろくろの椅子の高さ設定でした。身長170cmの私は、なんとなく「普通の高さでいいだろう」と考え、ろくろ盤と肘の高さを同じにしていました。しかし、これが大間違いだったのです。
正しくは、ろくろ盤が肘よりも5~7cm低い位置に来るよう椅子を調整する必要があります。私は逆に肘とろくろ盤を同じ高さにしていたため、腕に無駄な力が入り、30分の練習で肩がパンパンになっていました。
陶芸技能士の実技試験では、2時間の連続作業が求められます。間違った姿勢では、試験時間内に集中力を維持することは不可能です。正しい椅子の高さに調整してから、作業時の疲労度が劇的に改善されました。
足の位置が招いた作品の歪み
もう一つの致命的なミスは、足の置き方でした。サラリーマン時代のデスクワークの癖で、両足を揃えて椅子の下に入れ込んでいたのです。この姿勢では体の軸が不安定になり、ろくろが回転する際に体がふらついてしまいます。
正しい足の位置は以下の通りです:
項目 | 正しい位置 | 私の間違った位置 |
---|---|---|
右足(利き足) | ろくろペダルに軽く乗せる | 椅子の下に引っ込めていた |
左足 | 床にしっかりと着けて体を支える | 右足と揃えて不安定 |
両足の角度 | 肩幅程度に開く | 閉じて窮屈な状態 |
この間違いに気づくまでの2ヶ月間、作った茶碗はすべて左右非対称でした。ろくろ成形では、体の中心軸がぶれると作品も必ずぶれるのです。
手の位置と力の入れ方での大失敗
最も深刻だったのは、手の使い方でした。営業時代にパソコンを長時間使っていた影響で、指先に力を入れる癖がついていました。ろくろ成形では、指先ではなく手のひら全体で土を包み込むように成形する必要があります。
私は最初の1ヶ月間、指先だけで土を押し上げようとしていました。その結果:
– 作品の厚みが不均一になる
– 土に指の跡が深く残る
– 成形途中で土が崩れやすくなる
– 手首と指に過度な負担がかかる
陶芸教室の先生に「はちおさん、手全体で土と対話してください」と指摘され、ようやく正しい手の使い方を理解しました。手のひらで土の温度や湿度を感じながら成形することで、作品の完成度が格段に向上したのです。
この基本姿勢の修正により、3ヶ月目から急激に上達し、最終的には陶芸技能士3級に合格することができました。基本姿勢は地味ですが、すべての技術の土台となる最重要ポイントなのです。
土練りが不十分だった初回の大失敗から学んだ教訓
今でも鮮明に覚えています。初めてのろくろ体験で、私は土練りという基本中の基本を軽視してしまい、見事に大失敗を犯しました。陶芸教室の先生から「土練りは十分にやりましたか?」と聞かれた時、「はい、大丈夫です」と答えたものの、実際は5分程度しか練っていませんでした。営業マン時代の「とりあえずやってみる」精神が、ここでは完全に裏目に出てしまったのです。
土練り不足が招いた連鎖的な失敗
ろくろに向かい、意気揚々と土を置いて回転を始めました。最初の土殺し(※土の中心を出して安定させる作業)の段階から、何かがおかしいと感じていました。土がぶれて、なかなか中心に定まりません。無理やり形を整えようとして水を多めに使ったところ、今度は土がベタベタになってしまいました。
そして決定的な瞬間が訪れます。ようやく筒状に立ち上げた作品が、突然ぐにゃりと崩れ落ちたのです。隣で作業していた他の生徒さんたちの視線が痛く、恥ずかしさで顔が真っ赤になりました。後から陶芸技能士の資格を持つ先生に聞いたところ、土の中に気泡が残っていたことが主な原因だったそうです。
土練りの重要性を身をもって理解
この失敗を機に、私は土練りの重要性を徹底的に学び直しました。先生から教わった正しい土練りの手順と、その科学的な理由を以下の表にまとめました:
工程 | 目安時間 | 目的 | 私の失敗ポイント |
---|---|---|---|
荒練り | 10-15分 | 土の硬さを均一にする | 3分程度で済ませていた |
菊練り | 5-10分 | 気泡を完全に除去する | やり方を理解していなかった |
最終確認 | 2-3分 | 土の状態をチェック | 確認作業を省略していた |
失敗から得た具体的な改善策
この経験以降、私は土練りに対する姿勢を180度変えました。土練りは作品の8割を決めるという先生の言葉を胸に、毎回最低20分は土練りに時間をかけるようになりました。
特に効果的だったのは、練った土を輪切りにして気泡の有無を確認する方法です。最初の頃は1kgの土に対して平均3-4個の気泡が見つかりましたが、正しい土練りを続けることで、現在では気泡ゼロを達成できるようになりました。
また、土練りの際の手の動きを動画撮影して、先生の手本と比較することも実践しました。営業時代に培った「PDCAサイクル」の考え方を陶芸にも応用し、Plan(計画)→Do(実行)→Check(確認)→Action(改善)を繰り返すことで、着実に技術向上を図ることができました。
現在、陶芸技能士2級の取得を目指していますが、この初回の大失敗があったからこそ、基礎の重要性を深く理解できたと感じています。ろくろ成形において土練りは決して省略できない工程であり、この基本を疎かにしては、どんなに高度な技術を学んでも意味がないということを、身をもって学んだ貴重な体験でした。
ろくろの回転速度調整で何度も作品を台無しにした話
回転速度の調整ミス:3つの典型的な失敗パターン
ろくろ成形を始めて最初の3ヶ月間、私は回転速度の調整で何度も作品を台無しにしました。陶芸技能士の試験対策でろくろ成形を学ぶ際、この回転速度の感覚を掴むことが最も重要だと痛感しています。
私が経験した失敗パターンを整理すると、以下の3つに分類できます:
失敗パターン | 原因 | 結果 | 発生頻度 |
---|---|---|---|
高速回転での土練り不足 | 焦りから最初から速く回しすぎ | 土がろくろから飛び散る | 週3回の練習で毎回2-3個 |
成形時の急激な速度変化 | 力加減と速度調整の連携不足 | 器の壁が歪む・倒れる | 完成直前で月10個程度 |
仕上げ時の低速すぎる回転 | 慎重になりすぎて極端に遅く | 表面がガタガタに | 初期2ヶ月で頻発 |
営業マン時代の「せっかち癖」が最大の敵だった
サラリーマン時代、営業で結果を急ぐ癖がついていた私にとって、ろくろの回転速度調整は想像以上に難しい技術でした。特に印象に残っているのは、陶芸教室に通い始めて2ヶ月目の出来事です。
湯呑みを作ろうと意気込んで、いきなり回転数を毎分200回転近くまで上げてしまいました。土の中心出しもそこそこに成形に入ったところ、手を添えた瞬間に土が四方八方に飛び散り、隣で作業していた主婦の方のエプロンを汚してしまったのです。
この失敗から学んだのは、ろくろ成形には段階的な速度調整が不可欠だということでした。陶芸技能士の実技試験でも、この基本的な速度感覚が評価の重要なポイントになります。
段階別の適切な回転速度を体で覚える方法
失敗を重ねる中で、私なりに工程別の回転速度の目安を確立しました。これは独学では気づきにくい、実践的なコツです:
土練り・中心出し段階:毎分80-100回転
最初は土の重心を安定させることが最優先。この段階で焦ると、後の工程で必ず歪みが生じます。私は「ゆっくり確実に」を心がけ、土が完全に中心に来るまで速度を上げませんでした。
立ち上げ・成形段階:毎分120-150回転
器の形を作る最も重要な工程。速すぎると土が外に広がりすぎ、遅すぎると均一な厚みが作れません。この感覚を掴むまで、私は約4ヶ月かかりました。
仕上げ・口作り段階:毎分60-80回転
細かい調整が必要な最終段階では、むしろ回転を落とします。最初は「遅すぎるのでは」と不安でしたが、この速度でないと滑らかな仕上がりになりません。
現在、自宅工房で練習する際も、この速度管理を意識することで、作品の成功率が約8割まで向上しました。ろくろ成形で悩んでいる方は、まず回転速度の段階的調整から見直してみてください。営業時代の「結果を急ぐ」思考を捨て、工程ごとの適切な速度を体で覚えることが、確実な技術習得への近道だと実感しています。